税金・ふるさと納税
不動産投資の赤字とふるさと納税の上限(損益通算と土地の借入金利子)
公開 ・ 更新
書いた人:運営者(宅地建物取引士・上場不動産会社に10年勤務・現在はサラリーマン大家)
結論
不動産投資の赤字で税金が減ると、ふるさと納税の上限も下がる。
給与だけの早見表で寄附すると、払いすぎになりやすい。
なぜ下がるのか
不動産が赤字
減価償却費・借入金の利子など
給与と相殺
課税所得が下がる
住民税が減る
所得割が小さくなる
上限が下がる
所得割の2割が基準
中古物件は耐用年数が短く減価償却費が大きいので、赤字が出やすくなります(簡便法の耐用年数)。
例:給与収入800万円
不動産所得ごとのふるさと納税の上限
- 赤字100万円で約4.1万円下がる。課税所得が330万円を下回り、税率が20% → 10%になるため
- 赤字300万円では課税所得が195万円を下回り、税率5%。上限は約3.7万円まで下がる
土地の借入金の利子は相殺できない
赤字のうち土地を買うための借入金の利子の分は、給与と相殺できません(租税特別措置法41条の4)。 上の3本目がその例で、赤字100万円のうち20万円が土地の利子なので、相殺できるのは80万円だけ。上限の下がり方も小さくなります。
黒字の年は関係なし
この決まりが効くのは赤字の年だけ。購入代金を土地と建物に分け、利子を按分して求めます。
住宅ローン控除がある人
- 上限の基準は住宅ローン控除を引く前の所得割。控除そのものは上限を下げない
- ただし赤字で所得税が減ると、住民税から引ききれない控除が出て消えてしまうことがある(住民税から引ける上限は最高97,500円または136,500円)
申告のこと
- 不動産所得がある人は確定申告が必要。ワンストップ特例は使えない
- 赤字の年と黒字の年で上限は大きく変わる。前年ではなく、その年の見込みで計算する
詳しい解説
ワンルームマンションなどの不動産投資では、減価償却費(中古なら簡便法で短くした耐用年数で計算)や借入金の利子で帳簿上の赤字が出ることがあります。 この赤字は給与所得と相殺でき、所得税・住民税が減ります。その一方で、ふるさと納税の上限額も下がります。 一般的な早見表は給与収入だけを前提にしているので、不動産投資をしている人がそのまま使うと、寄附しすぎて自己負担が増えることがあります。
なぜ赤字で上限が下がるのか
ふるさと納税で自己負担2,000円を超えて戻ってくる額のうち、一番大きいのは住民税の「特例分」です。 この特例分には上限があり、住民税所得割額の2割までと決まっています(地方税法第37条の2)。 ふるさと納税の上限額は、おおよそ次の式で決まります。
上限額 ≒ 住民税所得割額 × 20% ÷(90% − 所得税の税率 × 1.021)+ 2,000円
不動産所得の赤字を給与所得と損益通算すると、課税所得が下がり、住民税の所得割も下がります。 基準になる所得割が小さくなるので、上限額も一緒に下がる、という仕組みです。 さらに、課税所得が下がって所得税の税率区分が1段下がると、式の分母が大きくなり、上限額はもう一段下がります。
計算例:給与収入800万円の場合
独身・40歳未満・社会保険料は給与から概算・生命保険料控除などその他の控除なし、として計算しています。
| 不動産所得 | 住民税所得割 | ふるさと納税の上限 | 赤字なしとの差 |
|---|---|---|---|
| なし | 446,500円 | 130,456円 | — |
| −100万円 | 346,500円 | 88,953円 | −41,503円 |
| −100万円(うち土地の借入金利子20万円) | 366,500円 | 107,461円 | −22,995円 |
| −300万円 | 146,500円 | 36,607円 | −93,849円 |
赤字が100万円なら上限は約4.1万円下がります。所得税の課税所得が330万円を下回り、上限の計算に使う税率が20%から10%に下がるため、 住民税の所得割が減った分より大きく下がります。300万円になると課税所得が195万円を下回って税率は5%になり、 上限は3.7万円ほどまで下がります。
土地の借入金利子は通算できない
不動産所得の赤字のうち、土地を取得するための借入金の利子に相当する部分は、給与所得などと損益通算できません (租税特別措置法第41条の4)。建物の分と違い、土地は減価しない資産なので、その借入れの利子で作った赤字を他の所得と相殺させない、という趣旨です。
上の表の3行目がこの例です。赤字は100万円でも、うち20万円が土地の借入金利子なので、通算できるのは80万円だけです。 その分、上限の下がり方は小さくなります(88,953円 → 107,461円)。この例では、課税所得が330万円を下回らないので税率も20%のままです。 物件の購入代金を土地と建物に分け、借入金の利子を按分して求めます。
注意
不動産所得が黒字の年は、この規定は関係ありません。赤字の年だけ、赤字のうち土地の借入金利子に相当する額(ただし赤字の額が上限)を通算から外します。
住宅ローン控除がある場合
住宅ローン控除は、所得税から引き切れなかった分を住民税から引く仕組みです。 ふるさと納税の上限の基準になる所得割は、住宅ローン控除を引く前の額なので、 住宅ローン控除そのものが上限を下げるわけではありません。
ただし、不動産の赤字で所得税が減ると、住宅ローン控除のうち所得税から引き切れない分が増えます。 住民税から引ける額には上限(課税総所得金額の5%または7%、最高97,500円または136,500円)があるため、 それを超えた分は使い切れずに消えてしまいます(いわゆる「枠落ち」)。 不動産投資の節税効果を見るときは、この消えてしまう分も差し引いて考える必要があります。
確定申告とワンストップ特例
- 不動産所得がある人は確定申告が必要なので、ワンストップ特例は使えません。寄附金控除は確定申告書に記載します。
- 赤字が出る年と黒字の年で上限は大きく変わります。前年の数字ではなく、その年の見込みで計算しましょう。
よくある質問
Q. 不動産の赤字は、ふるさと納税のほかに何に影響しますか?
Q. 青色申告特別控除も上限に影響しますか?
Q. 赤字かどうかはいつ分かりますか?
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記事は一般的な仕組みの解説で、個別の税務判断や契約の助言ではありません。税額や手続きは、税務署・自治体・税理士などにご確認ください。