税金・ふるさと納税

不動産投資の赤字とふるさと納税の上限(損益通算と土地の借入金利子)

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書いた人:運営者(宅地建物取引士・上場不動産会社に10年勤務・現在はサラリーマン大家)

結論

不動産投資の赤字で税金が減ると、ふるさと納税の上限も下がる。

給与だけの早見表で寄附すると、払いすぎになりやすい。

なぜ下がるのか

  1. 不動産が赤字

    減価償却費・借入金の利子など

  2. 給与と相殺

    課税所得が下がる

  3. 住民税が減る

    所得割が小さくなる

  4. 上限が下がる

    所得割の2割が基準

上限は「住民税の所得割の2割」が基準(地方税法37条の2)。所得税の税率が1段下がると、上限はさらに下がる。

中古物件は耐用年数が短く減価償却費が大きいので、赤字が出やすくなります(簡便法の耐用年数)。

例:給与収入800万円

不動産所得ごとのふるさと納税の上限

赤字なし
130,456円
赤字100万円
88,953円(−41,503円)
赤字100万円(うち土地の利子20万円)
107,461円(−22,995円)
赤字300万円
36,607円(−93,849円)
独身・40歳未満・社会保険料は給与から概算・その他の控除なし。
  • 赤字100万円で約4.1万円下がる。課税所得が330万円を下回り、税率が20% → 10%になるため
  • 赤字300万円では課税所得が195万円を下回り、税率5%。上限は約3.7万円まで下がる

土地の借入金の利子は相殺できない

赤字のうち土地を買うための借入金の利子の分は、給与と相殺できません(租税特別措置法41条の4)。 上の3本目がその例で、赤字100万円のうち20万円が土地の利子なので、相殺できるのは80万円だけ。上限の下がり方も小さくなります。

黒字の年は関係なし

この決まりが効くのは赤字の年だけ。購入代金を土地と建物に分け、利子を按分して求めます。

住宅ローン控除がある人

  • 上限の基準は住宅ローン控除を引く前の所得割。控除そのものは上限を下げない
  • ただし赤字で所得税が減ると、住民税から引ききれない控除が出て消えてしまうことがある(住民税から引ける上限は最高97,500円または136,500円)

申告のこと

  • 不動産所得がある人は確定申告が必要。ワンストップ特例は使えない
  • 赤字の年と黒字の年で上限は大きく変わる。前年ではなく、その年の見込みで計算する
詳しい解説

ワンルームマンションなどの不動産投資では、減価償却費(中古なら簡便法で短くした耐用年数で計算)や借入金の利子で帳簿上の赤字が出ることがあります。 この赤字は給与所得と相殺でき、所得税・住民税が減ります。その一方で、ふるさと納税の上限額も下がります。 一般的な早見表は給与収入だけを前提にしているので、不動産投資をしている人がそのまま使うと、寄附しすぎて自己負担が増えることがあります。

なぜ赤字で上限が下がるのか

ふるさと納税で自己負担2,000円を超えて戻ってくる額のうち、一番大きいのは住民税の「特例分」です。 この特例分には上限があり、住民税所得割額の2割までと決まっています(地方税法第37条の2)。 ふるさと納税の上限額は、おおよそ次の式で決まります。

上限額 ≒ 住民税所得割額 × 20% ÷(90% − 所得税の税率 × 1.021)+ 2,000円

不動産所得の赤字を給与所得と損益通算すると、課税所得が下がり、住民税の所得割も下がります。 基準になる所得割が小さくなるので、上限額も一緒に下がる、という仕組みです。 さらに、課税所得が下がって所得税の税率区分が1段下がると、式の分母が大きくなり、上限額はもう一段下がります。

計算例:給与収入800万円の場合

独身・40歳未満・社会保険料は給与から概算・生命保険料控除などその他の控除なし、として計算しています。

不動産所得住民税所得割ふるさと納税の上限赤字なしとの差
なし446,500円130,456円—
−100万円346,500円88,953円−41,503円
−100万円(うち土地の借入金利子20万円)366,500円107,461円−22,995円
−300万円146,500円36,607円−93,849円

赤字が100万円なら上限は約4.1万円下がります。所得税の課税所得が330万円を下回り、上限の計算に使う税率が20%から10%に下がるため、 住民税の所得割が減った分より大きく下がります。300万円になると課税所得が195万円を下回って税率は5%になり、 上限は3.7万円ほどまで下がります。

土地の借入金利子は通算できない

不動産所得の赤字のうち、土地を取得するための借入金の利子に相当する部分は、給与所得などと損益通算できません (租税特別措置法第41条の4)。建物の分と違い、土地は減価しない資産なので、その借入れの利子で作った赤字を他の所得と相殺させない、という趣旨です。

上の表の3行目がこの例です。赤字は100万円でも、うち20万円が土地の借入金利子なので、通算できるのは80万円だけです。 その分、上限の下がり方は小さくなります(88,953円 → 107,461円)。この例では、課税所得が330万円を下回らないので税率も20%のままです。 物件の購入代金を土地と建物に分け、借入金の利子を按分して求めます。

注意

不動産所得が黒字の年は、この規定は関係ありません。赤字の年だけ、赤字のうち土地の借入金利子に相当する額(ただし赤字の額が上限)を通算から外します。

住宅ローン控除がある場合

住宅ローン控除は、所得税から引き切れなかった分を住民税から引く仕組みです。 ふるさと納税の上限の基準になる所得割は、住宅ローン控除を引く前の額なので、 住宅ローン控除そのものが上限を下げるわけではありません。

ただし、不動産の赤字で所得税が減ると、住宅ローン控除のうち所得税から引き切れない分が増えます。 住民税から引ける額には上限(課税総所得金額の5%または7%、最高97,500円または136,500円)があるため、 それを超えた分は使い切れずに消えてしまいます(いわゆる「枠落ち」)。 不動産投資の節税効果を見るときは、この消えてしまう分も差し引いて考える必要があります。

確定申告とワンストップ特例

  • 不動産所得がある人は確定申告が必要なので、ワンストップ特例は使えません。寄附金控除は確定申告書に記載します。
  • 赤字が出る年と黒字の年で上限は大きく変わります。前年の数字ではなく、その年の見込みで計算しましょう。
よくある質問

Q. 不動産の赤字は、ふるさと納税のほかに何に影響しますか?

A. 所得税・住民税が減るほか、合計所得金額が下がるので、配偶者控除の判定や国民健康保険料などにも影響します。

Q. 青色申告特別控除も上限に影響しますか?

A. 影響します。所得が減るので上限も下がります。不動産所得で65万円(55万円)の控除を受けるには事業的規模(おおむね5棟10室以上)が必要で、それ以外は10万円です。

Q. 赤字かどうかはいつ分かりますか?

A. 年末に確定します。減価償却費や修繕費を含めて年の途中で見込みを出し、寄附額には余裕を持たせましょう。
不動産所得の赤字・土地の利子の除外・住宅ローン控除の枠落ちまで入れて上限を計算します。
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